関数を管理する

Firebase CLI コマンドを使用するか、関数のソースコードでランタイム オプションを設定することにより、関数をデプロイ、削除、変更できます。

関数をデプロイする

関数をデプロイするには、次の Firebase CLI コマンドを実行します。

$ firebase deploy --only functions

デフォルトでは、Firebase CLI によって index.js 内のすべての関数が同時にデプロイされます。プロジェクトに 6 つ以上の関数が含まれている場合は、特定の関数名で --only フラグを使用して、編集した関数のみをデプロイすることをおすすめします。このようにして特定の関数をデプロイすると、デプロイ プロセスが迅速化され、デプロイの割り当ての問題を回避できます。次に例を示します。

$ firebase deploy --only functions:addMessage,functions:makeUppercase

多くの関数をデプロイすると、標準の割り当てを超過し、HTTP 429 または 500 エラー メッセージが表示されることがあります。これを解決するには、10 個以下のグループで関数をデプロイします。

使用可能なコマンドの一覧については、Firebase CLI リファレンスをご覧ください。

デフォルトでは、Firebase CLI によって functions/ フォルダ内でソースコードが検索されます。コードベースまたは複数のファイルセット内に関数を編成することもできます。

関数を削除する

過去にデプロイした関数は、次の方法で削除できます。

  • functions:delete を使用して Firebase CLI で明示的に行う
  • Firebase コンソールの関数リストにあるコンテキスト メニューを使用して明示的に削除する
  • デプロイの前に index.js から関数を削除して暗黙的に行う

本番環境から関数を削除しようとするたびに、削除操作の確認を求められます。

Firebase CLI で明示的に関数を削除する方法では、複数の引数だけでなく関数のグループもサポートされ、特定のリージョンで実行されている関数を指定できます。また、確認メッセージをオーバーライドすることもできます。

# Delete all functions that match the specified name in all regions.
$ firebase functions:delete myfunction

# Delete a specified function running in a specific region.
$ firebase functions:delete myfunction --region us-east-1

# Delete more than one function
$ firebase functions:delete myfunction myotherfunction

# Delete a specified functions group.
$ firebase functions:delete groupA

# Bypass the confirmation prompt.
$ firebase functions:delete myfunction --force

暗黙的に関数を削除する方法では、firebase deploy により index.js が解析され、ファイルから削除されたすべての関数が本番環境から削除されます。

関数の名前、リージョン、トリガーを変更する

本番トラフィックを処理している関数のリージョンまたはトリガー(またはそれらの名前)を変更する場合は、このセクションの手順に沿って、変更中にイベントが失われないようにしてください。以下の手順を行う前に、まず関数がべき等であることを確認します。これは、関数の新旧両方のバージョンが変更中に同時に実行されるためです。

関数の名前を変更する

関数の名前を変更するには、関数の名前を変更した新しいバージョンを index.js に作成してから、2 つの別々のデプロイ コマンドを実行します。最初のコマンドは新しい名前の関数をデプロイし、2 番目のコマンドは以前にデプロイされたバージョンを削除します。たとえば、webhook という関数の名前を webhookNew に変更する場合は、次のようにコードを変更します。

// before
const {onRequest} = require('firebase-functions/v2/https');

exports.webhook = onRequest((req, res) => {
    res.send("Hello");
});

// after
const {onRequest} = require('firebase-functions/v2/https');

exports.webhooknew = onRequest((req, res) => {
    res.send("Hello");
});

続いて、次のコマンドを実行して新しい関数をデプロイします。

# Deploy new function called webhookNew
$ firebase deploy --only functions:webhooknew

# Wait until deployment is done; now both webhooknew and webhook are running

# Delete webhook
$ firebase functions:delete webhook

関数のリージョンを変更する

本番環境トラフィックを処理している関数のリージョンを変更する場合は、以下の手順を順番に実施すると、イベントが失われないようにできます。

  1. 関数の名前とリージョンを任意に変更します。
  2. 名前を変更した関数をデプロイします。これにより、一時的に両方のリージョンで同じコードが実行されます。
  3. 前の関数を削除します。

たとえば、現時点でデフォルトの関数リージョン us-central1webhook という関数があり、それを asia-northeast1 に移行する場合は、ソースコードを変更して関数の名前を変更してからリージョンを変更する必要があります。

// before
const {onRequest} = require('firebase-functions/v2/https');

exports.webhook = onRequest((req, res) => {
    res.send("Hello");
});

// after
const {onRequest} = require('firebase-functions/v2/https');

exports.webhookasia = onRequest({
        region: 'asia-northeast1'
    }, (req, res) => {
    res.send("Hello");
});

続いて、次のコマンドを実行してデプロイします。

$ firebase deploy --only functions:webhookAsia

これで 2 つの同じ関数が実行されます。webhookus-central1 で実行され、webhookasiaasia-northeast1 で実行されます。

次に、webhook を削除します。

$ firebase functions:delete webhook

これで、関数は asia-northeast1 で実行される webhookasia だけになります。

関数のトリガータイプを変更する

Cloud Functions for Firebase デプロイの開発の進展に応じて、さまざまな理由により関数のトリガータイプを変更する必要が生じる場合があります。たとえば、汎用の onWrite イベントをきめ細かな onCreate イベントに変更するなど、Firebase Realtime Database または Cloud Firestore イベントタイプの変更が必要になることがあります。

ソースコードを変更して firebase deploy を実行するだけでは、関数のイベントタイプを変更できません。エラーを回避するために、次の手順に従って関数のトリガータイプを変更します。

  1. 目的のトリガータイプを使用する新しい関数が含まれるように、ソースコードを変更します。
  2. 関数をデプロイします。これにより、一時的に新旧両方の関数が実行されます。
  3. Firebase CLI を使用して、本番環境から古い関数を明示的に削除します。

たとえば、従来の onMetadataUpdated イベントタイプを使用する objectchanged 関数があり、それを onObjectFinalized に変更する場合は、まず関数の名前を変更して、onObjectFinalized イベントタイプを使用するように編集します。

// before
const {onMetadataUpdated} = require('firebase-functions/v2/storage');

exports.objectchanged = onMetadataUpdated((event) => {
    return console.log('File name is: ', event.data.name);
});

// after
const {onObjectFinalized} = require('firebase-functions/v2/storage');

exports.objectchanged = onObjectFinalized((event) => {
    return console.log('File name is: ', event.data.name);
});

続いて、古い関数を削除する前に、先に次のコマンドを実行して新しい関数を作成します。

# Create new function objectFinalized
$ firebase deploy --only functions:objectFinalized

# Wait until deployment is done; now both objectChanged and objectFinalized are running

# Delete objectChanged
$ firebase functions:delete objectChanged

ランタイム オプションを設定する

Cloud Functions for Firebase ではランタイム オプションを選択できます。設定できるランタイム オプションには、Node.js ランタイムのバージョン、関数ごとのタイムアウト、メモリ割り当て、関数インスタンスの最小数と最大数などがあります。

これらのオプション(Node.js バージョンを除く)は、関数コード内の構成オブジェクトに設定することをおすすめします。この RuntimeOptions オブジェクトは関数のランタイム オプションの信頼できる情報源であり、他の方法(Google Cloud Console や gcloud CLI など)で設定されたオプションをオーバーライドします。

Google Cloud コンソールや gcloud CLI を使用して手動で設定するランタイム オプションが開発ワークフローに含まれていて、これらの値を各デプロイでオーバーライドしたくない場合は、preserveExternalChanges オプションを true に設定します。このオプションを true に設定すると、Firebase はコードに設定されているランタイム オプションと、現在デプロイされているバージョンの関数の設定を、次の優先順位で結合します。

  1. オプションが関数コードで設定されている場合、外部の変更をオーバーライドします。
  2. オプションが関数コードで RESET_VALUE に設定されている場合、外部の変更をデフォルト値でオーバーライドします。
  3. オプションは関数コードで設定されていないが、現在デプロイされている関数で設定されている場合、デプロイされている関数に指定されたオプションを使用します。

ほとんどのシナリオでは、preserveExternalChanges: true オプションの使用はおすすめしません。関数のランタイム オプションに関して、コードが信頼できる完全な情報源でなくなるためです。このオプションを使用する場合は、Google Cloud コンソールを確認するか、gcloud CLI を使用して関数の完全な構成を表示します。

Node.js のバージョンを設定する

Firebase SDK for Cloud Functions(第 2 世代)では、Node.js ランタイムを選択できます。プロジェクト内のすべての関数を、サポートされている以下のいずれかの Node.js バージョンに対応するランタイム環境のみで実行するように選択できます。

  • Node.js 16
  • Node.js 14

Node.js のバージョンを設定するには:

初期化時に functions/ ディレクトリに作成された package.json ファイルの engines フィールドにバージョンを設定します。たとえば、バージョン 16 のみを使用するには、package.json の次の行を編集します。

  "engines": {"node": "16"}

engines フィールドは必須です。関数をデプロイして実行するには、サポートされているいずれかの Node.js バージョンを指定する必要があります。現在、firebase init functions はこのフィールドを 16 に設定します。

Node.js ランタイムをアップグレードする

Node.js ランタイムをアップグレードするには:

  1. プロジェクトで Blaze 料金プランを利用していることを確認します。
  2. Firebase CLI バージョン 9.17.0 以降を使用していることを確認します。
  3. 初期化時に functions/ ディレクトリに作成された package.json ファイルの engines の値を変更します。たとえば、バージョン 10 からバージョン 16 にアップグレードする場合、エントリは次のようになります。"engines": {"node": "16"}
  4. Firebase CLI v9.17.0 以降を使用して関数を再デプロイします。

スケーリング動作の制御

デフォルトでは、Cloud Functions for Firebase は受信リクエストの数に基づいて実行インスタンスの数をスケーリングします。トラフィックが減少すると、インスタンス数がゼロまでスケールダウンされる可能性があります。ただし、アプリでレイテンシを短縮する必要があり、コールド スタートの数を制限する場合は、ウォーム状態を維持し、いつでもリクエストを処理できるコンテナ インスタンスの最小数を指定して、このデフォルトの動作を変更できます。

同様に、受信リクエストに応じてスケーリングされるインスタンス数に最大数を設定して制限を設けることができます。この設定を使用して、コストの制御や、データベースなどのバッキング サービスへの接続数を制限できます。

これらの設定とインスタンスごとの同時実行(第 2 世代の新機能)を併用すると、関数のスケーリング動作を制御し、調整できます。最も費用対効果が高く、最適なパフォーマンスが得られる設定は、アプリケーションと機能の性質によって決まります。

トラフィックが少ないアプリの場合、マルチ同時実行を使用しない CPU オプションが最適です。また、コールド スタートが重要な問題である場合でも、同時実行数と最小インスタンス数を設定することで、インスタンスが常にウォーム状態を維持し、トラフィックの急増に対処できます。

トラフィックがほとんど発生しない小規模なアプリの場合は、最大インスタンス数を低く設定し、同時実行数を多くすることで、過剰な費用を発生させることなく、トラフィックのバーストを処理できます。

同時リクエストを許可する

Cloud Functions for Firebase(第 1 世代)では、各インスタンスが一度に 1 つのリクエストを処理するため、スケーリング動作は minInstancesmaxInstances でのみ設定されていました。Cloud Functions for Firebase(第 2 世代)では、インスタンス数を管理するだけでなく、concurrency オプションを使用して、インスタンスが同時に処理できるリクエスト数を制御できます。同時実行のデフォルト値は 80 ですが、1~1,000 の任意の整数に設定できます。

同時実行の設定が高い関数は、各インスタンスに少し余裕があるため、コールド スタートを実行しなくてもトラフィックの急増に対応できます。1 つのインスタンスで最大 50 件の同時リクエストを処理できるように構成しているときに、25 件のリクエストしか処理していない場合、あと 25 件までは、追加のリクエストが急に発生しても、新しいインスタンスをコールド スタートすることなく対応できます。一方、同時実行数を 1 に設定している場合、リクエストの急増により 25 回のコールド スタートが発生する可能性があります。

Cloud Functions for Firebase(第 2 世代)で同時実行数の設定を増やす場合は、次の点に注意してください。

  • 同時実行の設定を高く設定した場合、最適なパフォーマンスを得るために、実用的な上限に達するまで CPU と RAM の増量が必要になることがあります。たとえば、負荷の高い画像処理や動画処理を行う関数を実行する場合は、CPU と RAM を最大に設定しても、同時に 1,000 件のリクエストを処理するためのリソースを確保できないことがあります。
  • Cloud Functions for Firebase(第 2 世代)は Cloud Run を利用しているため、同時実行の最適化に関する Google Cloud のガイダンスもご覧ください。
  • 本番環境をマルチ同時実行に切り替える前に、テスト環境で必ずマルチ同時実行をテストしてください。

コールド スタートの数を減らす

ソースコードで関数の最小インスタンス数を設定するには、minInstances オプションを使用します。たとえば、次の関数ではウォーム状態を維持する最小インスタンス数を 5 に設定しています。

  const { onCall } = require("firebase-functions/v2/https");

  exports.getAutocompleteResponse = onCall(
    {
      // Keep 5 instances warm for this latency-critical function
      minInstances: 5,
    },
    (event) => {
      // Autocomplete users search term
    }
  );

minInstances の値を設定する際は、次の点を考慮してください。

  • Cloud Functions for Firebase が minInstances の設定を超えてアプリをスケーリングした場合、このしきい値を上回る各インスタンスにコールド スタートが発生することになります。
  • コールド スタートは、トラフィックの急増があるアプリに特に大きな影響を及ぼします。アプリのトラフィックが急増する場合、minInstances に大きな値を設定すると、トラフィックが増加するたびにコールド スタートが発生するのを減らすことができ、レイテンシが大幅に短縮されます。トラフィックが一定しているアプリの場合、コールド スタートがパフォーマンスに大きな影響を与えることはほとんどありません。
  • 最小インスタンス数の設定は本番環境では意味がありますが、通常、テスト環境では避ける必要があります。テスト プロジェクトではゼロにスケールし、本番環境プロジェクトではコールド スタートを減らすようにするには、FIREBASE_CONFIG 環境変数に基づいて minInstances を設定します。

    // Get Firebase project ID from `FIREBASE_CONFIG` environment variable
    const envProjectId = JSON.parse(process.env.FIREBASE_CONFIG).projectId;
    
    exports.renderProfilePage = onRequest(
      {
        // Keep 5 instances warm for this latency-critical function
        // in production only. Default to 0 for test projects.
        minInstances: envProjectId === "my-production-project" ? 5 : 0,
      },
      (req, res) => {
        // render some html
      }
    );
    

関数の最大インスタンス数を制限する

関数のソースコードで最大インスタンス数を設定するには、maxInstances オプションを使用します。たとえば、次の関数では、仮想上のレガシー データベースの過負荷を防ぐためにインスタンス数の上限を 100 に設定しています。

  const { onMessagePublished } = require("firebase-functions/v2/pubsub");

  exports.mirrorevents = onMessagePublished(
    { topic: "topic-name", maxInstances: 100 },
    (event) => {
      // Connect to legacy database
    }
  );

HTTP 関数が maxInstances の上限までスケールアップされると、新しいリクエストは 30 秒間キューに入れられ、その間にいずれのインスタンスも使用可能にならない場合は、レスポンス コード 429 Too Many Requests で拒否されます。

最大インスタンス数の設定に関するベスト プラクティスについては、こちらの maxInstances を使用する際のベスト プラクティスをご覧ください。

タイムアウトとメモリ割り当てを設定する

場合によっては、長いタイムアウト値や大容量のメモリ割り当てに関して、関数に特別な要件が存在することがあります。これらの値は、Google Cloud Console または関数のソースコード(Firebase のみ)で設定できます。

関数のソースコードでメモリ割り当てとタイムアウトを設定するには、GlobalOptions.memoryGlobalOptions.timeoutSeconds を使用して、関数を実行する仮想マシンをカスタマイズします。たとえば、次の Cloud Storage 関数は 1 GiB のメモリを使用し、300 秒経過するとタイムアウトします。

  exports.convertLargeFile = onObjectFinalized({
    timeoutSeconds: 300,
    memory: "1GiB",
  }, (event) => {
    // Do some complicated things that take a lot of memory and time
  });

timeoutSeconds の最大値は 540(9 分)です。

Google Cloud コンソールでメモリ割り当てとタイムアウトを設定するには:

  1. Google Cloud コンソールで、左側のメニューから [Cloud Functions for Firebase] を選択します。
  2. 関数のリストで関数名をクリックして、関数を選択します。
  3. トップメニューの [編集] アイコンをクリックします。
  4. [割り当てられるメモリ] というプルダウン メニューから、メモリ割り当てを選択します。
  5. [詳細] をクリックして詳細オプションを表示し、[タイムアウト] テキスト ボックスに秒数を入力します。
  6. [保存] をクリックして関数を更新します。

CPU のデフォルトをオーバーライドする

メモリの割り当てが 2 GB 以下の場合、Cloud Functions for Firebase(第 2 世代)の各関数の CPU 数はデフォルトで 1 になります。4 GB と 8 GB の場合は 2 CPU になります。次の表に示すように、これは、第 1 世代のデフォルトの動作とは大きく異なるため、低メモリ関数の費用が若干高くなる可能性があります。

RAM 割り当て バージョン 1 のデフォルト CPU(小数) バージョン 2 のデフォルト CPU ミリ秒あたりの料金の違い
128 MB 1/12 1 10.5 倍
256 MB 1/6 1 5.3 倍
512 MB 1/3 1 2.7 倍
1 GB 7/12 1 1.6 倍
2 GB 1 1 1 倍
4 GB 2 2 1 倍
8 GB 2 2 1 倍
16 GB なし 4 なし

第 2 世代の関数で第 1 世代の動作を保持する場合は、第 1 世代のデフォルトをグローバル オプションとして設定します。

// Turn off Firebase defaults
setGlobalOptions({ cpu: 'gcfv1' });

第 2 世代では、大量の CPU を使用する関数の場合、追加の CPU を柔軟に構成できます。次に示すように、関数ごとに CPU を増やすことができます。

// Boost CPU in a function:
export const analyzeImage = onObjectFinalized({ cpu: 2 }, (event) => {
  // computer vision goes here
});